愛を秘めた外交官とのお見合い婚は甘くて熱くて焦れったい
 優しくて気の合う千隼さんをますます好きになっていた私は、その提案に心が浮きだった。
 同時に、不安も大きい。

 明るく面倒見がよくて、家庭的なところが私の取り柄だと、友人や親しくなった常連客は言ってくれる。
 でも、私にあるのは本当にそれだけだ。なにか自慢できるような資格を持っているわけでも、特技があるわけでもない。

 子どもの頃は父についてカナダやフランスで生活していた時期もあったため、英語とフランス語を少しは話せていた。ただ、今では使うところがないせいで忘れつつある。

 外見だって、いたって平凡なものだ。
 セミロングの黒髪は、仕事の邪魔にならないようにいつもポニーテールにしている。楽だからとついプライベートでも同じ髪型にしがちで、女性らしい華やかさなど感じられないだろう。
 黒目が大きくてぱっちりとした目を以前は気に入っていたけれど、今はあまり好きになれない。大人になるにつれて、涼やかな雰囲気の方が年相応だと思うようになってしまった。

 能力も容姿も、私には千隼さんと釣り合うものがなにもない。あらためて気づかされた彼との差が悲しくて、落ち込みそうになる。

 千隼さんほどの人なら、交際相手など選び放題だろう。
 お見合いで相手を見つけるのだとしても、それが私である必要はない。もっと条件のよい女性など、探せばいくらでもいるはずだ。

 期待を大きくする父らの圧力に負けてとりあえずはお見合いに応じたものの、断られるに違いないと信じて疑わなかった。
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