愛を秘めた外交官とのお見合い婚は甘くて熱くて焦れったい
 交わした会話から、彼が三十一歳だと知った。
 私とは歳が六歳離れている上に、生活環境がまったく違う。ふたりの間に共通するものなどありそうにもないのに、職業柄なのか彼は話題を見つけるのがとても上手くて自然と話が弾んだ。

 千隼さんから海外の話を聞くのも楽しかったし、私からは祖父のお薦めの日本酒を紹介する。すると彼は実際に注文して、とくに気に入ったものはそれからも繰り返し口にしていた。

 今夜は来てくれるだろうか。
 約束などなにもしていないのに、気づけば私は千隼さんの来店を心待ちにするようになっていた。

 ひと目でもいいから、彼に会いたい。そう望む自身に気づいたとき、私は千隼さんを男性として好きなのだと自覚した。

 親しくなった私たちを見ていたお互いの父親は、ふたりの相性がよさそうだと考えていたのかもしれない。

 父は『いい人はいないのか』『早く天国の母さんを安心させてやりたい』が口癖で、自分になにかがあれば娘がひとりになってしまうといつも心配していた。
 その気持ちはありがたいが、早く結婚するように言われているようでプレッシャーにもなる。

 そして千隼さんは、義父によれば多忙で落ち着いた暮らしができず、交際すらままならなかったらしい。そろそろ家庭を持ってほしくて、自分の知り合いに紹介を頼もうかと迷っていたところだったという。

 父親らの思惑が一致して、ふたりから唐突に千隼さんとの見合いを提案されたのだ。
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