愛を秘めた外交官とのお見合い婚は甘くて熱くて焦れったい
 そんな私の卑屈な予想は、なぜか外れた。
 最初の顔合わせ以降、千隼さんはもう少しふたりで過ごしてみたいとその先の関係を望んでくれたのだ。

 お見合いからすぐにデートに誘われて、仕事の合間を縫って映画やドライブに出かけた。会えない日も彼は欠かさず連絡をくれて、いろいろと勘違いしそうになる。

 父親同士のつながりもあり、もしかしてすぐに断るのは気が引けたのだろうか。
 ある程度の交流を持って友人のような関係になってしまえば、禍根を残さないお断りがしやすいと考えたのかもしれない。
 千隼さんに誘われて浮かれていた反面、自分に自信が持てなくて嫌な見方をしていた。

 けれど、断られる気配はまったくないまま、心地よい関係が一カ月、二カ月と続く。

 彼と過ごす時間は緊張するものの、徐々に慣れてお互いの距離が近づいていく。
 時間が経つにつれて私の中の千隼さんへの好意は増していき、このまま一緒にいられたらいいのにと強く願うまでになっていた。

 お見合いからもうすぐ三カ月になる頃、千隼さんに誘われて食事に出かけた。

 普段はデニムのパンツばかりを穿く私も、彼から誘われたときはスカートやワンピースを選ぶ。
 あの日も、購入して以来なかなか出番のなかった淡い黄色のワンピースを着ていたはずだ。

 食事を終えてそろそろ帰る頃だろうかと思っていたところで、千隼さんがポケットから小箱を取り出した。
 その形状を見てまさかと驚き、箱と彼との間で視線を往復させる。

『小春さんといると、穏やかな気持ちになれるんだ。どうか俺と、結婚してくれませんか』

 中身は、想像通り指輪だった。
 半信半疑だったとはいえ、こうして交流が続いていたのだからその可能性をまったく考えなかったわけじゃない。

 それでもいざ結婚を申し込まれればすぐには信じられず、動揺して言葉に詰まった。

『……あ、あの。本当に、私でいいんですか?』

 わずかに眉を下げた彼は、それから優しい笑みを浮かべる。

『小春さんがいいんです。俺と、家族になってくれませんか?』

 繰り返されたプロポーズに、今度こそ私は首を縦に振った。
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