愛を秘めた外交官とのお見合い婚は甘くて熱くて焦れったい
 父と千隼さんのやりとりを聞き流しながらこれまでのことを思い起こしていると、いつの間にか搭乗開始の時刻が迫っていた。

 我に返って、慌てて祖父にも声をかける。

「おじいちゃん、行ってくるね」

「ああ。こっちのことは心配しないでいい。小春こそ、気をつけて行ってくるんだぞ」

「うん」

 祖父と握手を交わして、それから義父に一歩近づく。

「おじさ……じゃなくて、お義父さん。行ってきますね」

「ようやく小春ちゃんに〝お義父さん〟って呼んでもらえる立場になったというのに、しばらくのお別れとは寂しいなあ」

 茶化すように言いながら差し出された手に、自身の手を重ねる。

「なにかあれば、いつでも頼ってくれよ。千隼がかまってくれないっていう愚痴でもかまわないから、連絡をくれるとうれしい」

 ウィンクをしながらそう言った義父に、思わず吹き出してしまう。そのおかげで、しんみりとしていた空気も一気に吹き飛んだ。

「父さん、くだらないことを言わないでください」

 いつの間にか隣に立っていた千隼さんに、肩をぐいっと抱き寄せられてドキリとする。
 不機嫌さをあらわにした彼に、義父はおかしくてたまらないというように声を上げて笑った。

「それでは、行ってきます」

 あらためて来てくれた三人に向き直り、千隼さんが頭を下げる。その隣で、私も彼に倣う。
 それから名残惜しさに何度も振り返りながら、千隼さんと並んで搭乗ゲートへ向かった。
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