愛を秘めた外交官とのお見合い婚は甘くて熱くて焦れったい
『会を重ねて、国内で日本酒がずいぶん浸透してきたと思っていた。だが、あの晩餐会の日本酒を飲んだら、まだまだ隠れた銘酒がありそうだと興味がわいてね』

 セイナーヴェさんは大のお酒好きのようで、晩餐会以来すっかり日本酒にはまっているのだと言う。
 ベルギーで日本酒のよさをもっと広めたいと、意気込んでいた。

『実は、妻の実家が日本酒を提供する料理屋を営んでいるんですよ』

 チラリと私を見た千隼さんが、話題のひとつとして提供する。

『それはいい! ぜひともお薦め銘柄を教えてほしい』

 前のめりになる様子に、この方は本当に日本酒を好きでいてくれるのだと気分が高揚する。

『私の実家は料理屋なので、提供するお酒は料理に合うものをと考えるんです』

『ほう』

 あまり参考にならないのではという不安はあるが、千隼さんの励ましの視線を感じて続ける。

『濃い味のお料理には、すっきりした後味のお酒を。使われている調味料を考慮して、邪魔にならないものを。そんなふうに合うお酒を提案します』

『なるほど』

 うなずきながら聞いてくれる様子に、興味を持ってもらえたようだと安堵した。
 ところどころ言い回しに困ったときは、千隼さんがサポートをしてくれる。おかげで、私の言いたいことはきちんと伝わっているようだ。

『料理だけでなく、季節によって冷酒と燗酒のどちらを選ぶかという楽しみ方もあるんです。同じお酒でも、温度によってまた違った楽しみ方ができるんですよ』

 温度も冷たい熱いの一括りではなく、五度刻みで〝花冷え〟や〝日向燗〟など名前がつけられており、それぞれ違った味わいになると説明したところ、ずいぶん驚かれた。
< 130 / 154 >

この作品をシェア

pagetop