愛を秘めた外交官とのお見合い婚は甘くて熱くて焦れったい
『ちょと、いいかしら』

 暗い思考に陥りかけていたところで、近づいてきた女性に声をかけられる。
 ハッとした山科さんは、すぐに笑みを浮かべて受け答えに応じた。

 数人を引きつれたその人は、パールホワイトのローブ・デコルテを纏っていた。過度な装飾はないもののどこか気品があり、その雰囲気につられて気持ちが引きしまる。

『まあ、素敵な着物ね。その花は〝サクラ〟かしら?』

『え、ええ。そうです』

『私も、滞在中に着物に挑戦してみたいわ』

 うっとりとそう口にした彼女に、山科さんは『手配しますね』とすぐさま応対した。

『同年代の女性の意見も聞いてみたくて、声をかけたのよ』

 それから女性は、本題を切りだした。
 私も含めて話をされているが、不用意な発言は控えた方がいいだろうと聞き役に徹する。

 彼女は日本の教育に興味があるようで、一貫校の制度はどうなのかと尋ねてきた。

 
『――おっしゃる通り、日本には初等教育と中等教育、あるいは中等教育と高等教育をわけずに通年で指導する教育カリキュラムを実施している学校があります』

 山科さんは複数の言語を取得しているようで、フランス語も流ちょうに話している。

『教育を長いスパンで捉えて、各校で特色を出していくことで、子どもたちの学習への意欲が高まります。ただその反面、人の出入りは難しくなってしまいます。他校から編入した際に学習の進め方がまったく異なっているため、馴染むまでに時間を要するのが課題ですね』

 教育は山科さんの専門ではないと思うが、それでもすぐに答えられる見識の広さに感心しながら耳を傾ける。
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