愛を秘めた外交官とのお見合い婚は甘くて熱くて焦れったい
『ベルギーでは、小学校での成績がその子の人生を大きく左右するの』 

 小学生でも、成績が基準に満たない場合は落第するのだというから驚きだ。
 山科さんは、ベルギーのその教育方針を素晴らしいと讃えた。

『あなたは、ベルギーの教育についてどう思うかしら?』

 不意に話を振られて、ギクリとする。

『遠慮なく、考えを聞かせてほしいわ』

 優しく微笑みかけられ、ゴクリと喉を鳴らす。密かに手を握りしめて、素早く逡巡した。

『私は……幼いうちから学習の大切を知ることができて、とてもよいと思います。けれど……』

 落第の可能性があるのなら、子どもたちは必死で勉強をするようになるだろう。
 でも、目の前で多くの仲間が進級していく中で、自分だけ年下の子に混ざって学習する立場になったらどんな気持ちになるだろうか。

 今度こそはと奮起できればいいが、中には学校が嫌になってしまう子もいるかもしれない。
 それは日本人である私の感覚にすぎないかもしれず、実際のベルギーの子たちがどう捉えるかはわからない。

 話している間中、山科さんの鋭い視線を感じる。怯みそうになるが、目の前の女性は興味津々といった様子で私を見つめており、続けないわけにはいようだ。

『心身の発達途中の子どもたちに背負わせるには、少し荷が重いように感じました』

 正直な考えを伝えたところ、女性は『聞かせてくれてありがとう』と満足そうに笑みを返してきた。
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