愛を秘めた外交官とのお見合い婚は甘くて熱くて焦れったい
「彼女は、自国の教育方針に誇りを持っているのよ。それを、素人の思いつきで批判まがいに返すなんて言語道断だわ」

 殿下かもしれないと、話している途中で気がついていた。
 だからこそ自身の拙い考えを述べてよいものかと迷ったが、彼女の様子から忌憚のない意見を求めているようにも感じた。

「た、たしかに、国の方針とは逆の意見だったかもしれません。でも、失礼にあたるとまでは思いませんでした」

 山科さんの勢いに気圧されながらも、なんとか伝える。

 殿下に気分を害した様子はなかったはず。それどころか、別れ際は満足そうな顔をされていた。

 けれどこうして責められれば、やはり間違っていたのかもしれないと不安になる。

 殿下の反応は、表面上取り繕ったものだったのだろうか。
 人前でむやみに感情を荒げないのは当然で、私たちに見せていたのは取り繕った反応だったのかもしれない。

 余計な話などしなければよかったと、今さらながらに後悔する。

「ベルギーで暮らすチャンスがあったというのに、あなたはそれを不意にした。最初から、彼を支える気なんてまったくないじゃないの」

 もし私がベルギーに残っていたら、今日顔を合せた方々との交流もさらに深められていたかもしれない。ベルギーの文化や教育なども、もっと理解できていたはずだ。

「なにも知らないにもかかわらず、少しくらい言葉を学んだからと口出ししていいものではないわ。千隼先輩からも、言われているんじゃないかしら。挨拶さえすれば、あとは隣にいるだけでいいと」

「それは……」

 彼女の指摘に、思わずたじろいだ。
 たしかに彼は、挨拶ができれば後は自分がフォローすると言っていた。
 それはてっきり初めて同伴する私への気遣いかと捉えていたが、本当は余計なことをするなという牽制だったのかもしれない。
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