愛を秘めた外交官とのお見合い婚は甘くて熱くて焦れったい
「そうなんだろ、小春」

 打って変わって穏やかに問いかけられて、遠慮がちに小さくうなずく。

「俺は君の夫なのに、気づいてやれなくて本当にすまない」

 眉を下げる彼を、慌てて否定する。

「そ、そんな。千隼さんのせいじゃないし、黙っていたのは私だわ」

 問題があったのは、自分に自信がないゆえに彼を信じきれなかった私の方だ。
 私は千隼さんの妻にふさわしくないと決めつけて、別れを切りだされるかもしれないとずっと怯えていた。勇気を出して聞けばいいものを、それすら怖くてできなかった。

「それについては、後で聞かせてくれ」

 よくよく考えてみれば、レセプションパーティーはまだ終わっていない。
 私はともかく、千隼さんが長く抜けていて大丈夫なのかと心配になってくるが、問題ないというようにつながれた手に力がこもる。

「山科のためにも、もう一度はっきりと言っておく。俺は山科の気持ちには応えられない。今後は、二度と妻に不用意な接触をしないように。守られない場合は、こちらも黙っているつもりはない」

 強く拒絶されて、山科さんが顔色を失う。

 彼女も私も、千隼さんが好きだという気持ちは同じだ。それだけに、今にも泣きだしそうな山科さんを見ていると胸が苦しくなった。

「……申し訳、ありませんでした」

 震える声で謝罪し、ゆっくりと頭を下げる。
 顔を上げたときには、もう千隼さんにも私にも視線を向けないまま、静かにその場を去っていった。
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