愛を秘めた外交官とのお見合い婚は甘くて熱くて焦れったい
「すまない。俺は彼女と飲む機会がそれほどなかったから、山科の不自然さに気づけなかった」

 私が彼女の言動に嫌な思いをしていたと、表情から気づいたのだろう。

「ううん。もう大丈夫だから」

 さっき彼女から守ってくれたから、もやもやとした気持ちはすっかり晴れている。

「勘違いならそれでよかったんですが、ずっとそれが引っかかっていて。そこに来て小春さんが山科に連れ出される場面を見かけたので、念のため知らせました。体調不良でもそうでなかったとしても、高辻さんに把握してもらっておいた方がよいでしょうし」

 あの場に千隼さんが来ていなかったら、山科さんに一方的に責められて参っていたかもしれない。

「櫛田さん、ありがとうございます」

「俺からも、あらためて礼を言わせてくれ。本当にありがとう」

「いいえ。高辻さんにはいつも助けられてばかりなので、これくらいは役に立たないと。それに、お礼というならまた紅葉亭へ連れて行ってくださいよ。あの店、本当に好きなんで」

 彼の言葉がうれしくて、満面の笑みが浮かぶ。

「いつでも、いらしてくださいね。今度、こっそりサービスしますから」

「ちょっと待て、小春。小春の特別は、俺だけのものだろ?」

 浮かれる私に、千隼さんから苦情が入る。
 独占欲を隠さない彼に、恥ずかしくて頬が熱くなった。

「なんですか、その高辻さんだけの特別って」

 からかう口調の櫛田さんに、ますます羞恥を煽られる。たまらず両手で顔を覆った。

「おふたりって、本当に仲がいいですよね。紅葉亭でも、たまにアイコンタクトを取ったりして。羨ましい限りです」

「ははは。結婚はいいものだよ。櫛田もがんばれ」

「あーあ。感謝されていたはずが、結局は惚気を聞かされてるし」

 おどけて困った表情をした櫛田さんがおかしくて、千隼さんと顔を見合わせて笑い合った。
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