愛を秘めた外交官とのお見合い婚は甘くて熱くて焦れったい
「それはどうして? 小春」

 さらに追い詰めてくる千隼さんが恨めしい。首を左右に振って、言えないと意思表示をした。

「なあ、教えろよ。小春」

 私の体を揺すりながら、わざとらしく荒っぽい口調で強請る。
 いろいろな姿を見せてくれるのは、私に気を許しているからだろうか。

「小春」

 そうかと思えば、甘い声で私を呼ぶ。
 私の髪に顔をうずめた千隼さんは、そのまま頬ずりをしてくる。彼の甘えるような仕草に、胸がときめいた。

 あの手この手を使って、私から答えを引き出そうとする。
 再会したあの日、私がいっさい拒んでいなかったのは彼だってわかっているはずだ。

「わ、私も」

「うん」

 途切れ途切れに話す私に、彼が相槌を打つ。

「そ、その。千隼さんが、ずっと好きで」

「いつから?」

「お見合いの、前から」

 私を抱きしめる彼の腕に、ぐっと力がこもる。

「本当に? もっと聞かせてよ。そうでないと、俺に気を遣ってくれているのかと、勘違いしてしまいそうだ」

 そう言われてしまうと、私の立場は弱い。
 彼の優しさを性格からくるものだと思い込み、別れが怖くてなにも聞けずにいた。
 言葉にしなければわかり合えないと痛感させられたからには、ここで黙秘するわけにはいかない。たとえこの問いかけに、彼のいたずらな心あったとしても。

「スイスから帰国して、また紅葉亭に来てくれるようになったでしょ? あの頃から、だんだん千隼さんが気になって」

「それで?」

 確実に、楽しんで私を追い詰めている。
 私がなにかを答えれば必ず問い返してきて、それから根掘り葉掘り問いただされる。
 そんな繰り返しの連続にしびれを切らした私は、とうとう最後に叫ぶように告白した。

「わ、私も、千隼さんをずっと愛しているの!!」

「俺を好きになってくれて、ありがとう」

 質問攻めからやっと解放されて、ほっとする。
 気を抜いた私を、彼は素早く横抱きにした。
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