愛を秘めた外交官とのお見合い婚は甘くて熱くて焦れったい
「なっ、なっ」

 慌てる私にかまわず、頬をひとなでした彼はいつになく真剣な顔をした。

「俺が温かな家庭に憧れを抱いているのは、知っているね?」

 突然の切り出しに慌てて耳を傾けながら、こくこくとうなずく。

「うちの両親は、反面教師のようなものだ」

 義父が千隼さんに絡みはじめたのは、彼がすっかり大人になってからだ。
 どう接すればいいのかわからなかった義父の不器用なちょっかいは、彼に鬱陶しがられてばかりだった。
 けれど、いくら邪険にされても、義父は千隼さんと関わることをやめなかった。

 そんな父親を彼が本心では慕っているのだと、その後のふたりを見ていれば明白だ。

「俺は、笑顔に溢れた家庭を築きたい。それには、隣に小春がいてほしいと強く望んだ」

 なんだか照れくさくて、彼に抱き着いて顔を隠す。

「でもな、それで小春を家に縛りつけてしまうのは違う。自由を奪って小春から笑顔が無くなったら、意味がないんだ」

「いつも私のやりたいようにさせてくれて、本当にありがとう。私も、千隼さんと明るい家庭を作っていきたいって思ってる」

 顔をうずめたまま、本心を伝える。

「なあ、小春」

 背中をなでる彼の手が心地いい。

「そろそろ俺たちに、新しい家族がほしいと思わないか?」

 子どもを望んでいるのだと気づき、ピクリと肩が跳ねる。

「……それは、もちろん。私もほしい」

 小声で返すと、彼の手がピタリと止まる。

 それからすぐさま立ち上がった彼は、「意見は一致したな」と仰々しい口調で言いながらすたすたと歩きはじめた。

「は? え?」

 振り落とされないように慌てて彼の首にしがみつきながら、困惑の声を上げる。

「ち、千隼さん?」

 真っすぐに向かう先に、その意図を察知した。

 寝室にたどり着き、優しくベッドに横たえられる。
 私に覆いかぶさった千隼さんが、ニヤリと笑った。

「つくろうか。家族を」

 急な展開に驚いて、目を見開く。
 けれど、拒否するつもりはない。
 小さくうなずき返した私を抱きしめた彼が、耳もとでささやいた。

「愛してる、小春」

 たまらず、私も彼を抱きしめ返す。

「私も、愛してる。」

 体を起こした彼は、色気のあふれる流し目を送りながら私の服に手をかけた。
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