愛を秘めた外交官とのお見合い婚は甘くて熱くて焦れったい
 現状に不満がないのは、私の本心だ。寂しくないと言えば嘘になるが、自分が彼の負担にはなりたくない。

 しばらくして我に返り、小さく頭を振って気持ちを切り替える。
 帰宅した彼が快適に過ごせるようにしてあげたくて、掃除も料理もがんばっている。実家でも私がメインで家事をしていたため、苦にはならない。

 まずは、ベッドメイキングに向かった。
 夫婦として一緒に暮らすようになったとはいえ、今のところはすれ違いのような生活が続いている。

 私の時差疲れは数日で落ち着き、彼の帰宅を起きて待つようにしている。
 ただ、遅くに帰った彼とそれほどゆっくりできるわけではない。翌日に備えて少しでも早く休んでもらえるように、私からも促すようにしきた。

 一緒のベッドで眠っているとはいえ、慌ただしくしているため彼とは未だに体の関係はない。

『俺の仕事がもう少し落ち着いたら、夫婦のきずなを深めていこう』

 先日の夕飯の席で、千隼さんはそう言っていた。
 直接的な言葉ではなかったが、その意図はきちんと理解している。

 彼は決して私を蔑ろにしているわけではなく、むしろ大切にしてくれているからこそ、急いた関係を避けたのだろう。

 求められないことに対してわずかに抱いた不安も、彼の私への配慮に気づいて消えてなくなった。
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