愛を秘めた外交官とのお見合い婚は甘くて熱くて焦れったい
 さらに数日が経ち、千隼さんの仕事もようやく一段落がついた。気づけば、こちらへ来てから数週間が経っていた。

「やっと小春とデートができるな」

 ここ数日は比較的早い時間に帰宅できるようになり、休日には一緒に出かけようと相談してきた。
 ようやく当日を迎え、久しぶりにワンピースに身を包んだ。

 最初の目的地に選んだのは、グラン・プラスだ。

「すごい! 建築様式には詳しくないけど、見ているだけで圧倒されるわ」

「本当だな。あっ、ほら。あの市庁舎の棟の先を見て」

 千隼さんに促されて、顔を上げる。

「なんだろう。なにか飾られているのはわかるけど……?」

「あれは竜を打ち倒す、この町の守護天使なんだそうだ。それから、そっちのギルドハウスの屋根には、それぞれの職種を表すモチーフが飾られている」

 彼の指さす方に視線を向けると、たしかにそれぞれの屋根には違う飾りがついているようだ。

 ベルギーでの勤務が決まってから、彼はこの国に関するたくさんの情報を頭に入れている。それは外交官として当然かもしれないが、彼の勤勉さには頭が下がる。

「そっちの星の家にある、英雄・セルクラースの臥像の右手に触れると、幸運が訪れると言われているらしい」

「それなら、絶対に触りにいかないと!」

 勢いのまま歩きだす。
 今日は家を出た瞬間から手をつながれている。遠慮なく、ぐいぐいと彼の手を引いた。

 像の前には観光客が数人並んでおり、私たちもそれに続く。

 それほど待たずに、私たちの番がやってきた。
 像に近づき、ふたりそろってその右手に触れる。そっと目を閉じて、この結婚生活が上手くいくようにと心の中で祈った。
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