愛を秘めた外交官とのお見合い婚は甘くて熱くて焦れったい
「そういえば、千隼さんはどうして外交官になろうと思ったの?」

 ずっと気になってはいたものの、なんとなく聞くタイミングが掴めずにいた疑問だ。
 開放的な気分になっているからか、気負いなく尋ねられた。

「そうだなあ。理由をつけようと思えばいろいろあるんだろうが……」

 顎に手を添えて考え込む彼を、そっと見つめる。

「一番の決め手は、憧れかな」

「それは一番大事な要素だね」

 するりとそう返した私に、千隼さんは笑みを浮かべた。

「高校生の進路を意識しはじめた時期に、何人かの外部講師の話を聞く授業があったんだ。そのひとりが外交官だった人で、互いの国を知り合うことで友好を深めて、世界中から争いごとを失くしたいと語っていた。それに感銘を受けたっていうのが、大きなきっかけかな」

 規模の大きな話に驚きつつ、ひと言も漏らすまいと耳を傾ける。

「たくさんの情報に接して、いかに日本を売り込むのか戦略を練る。そんな仕事内容にも興味が湧いたし、性に合っていたんだろうな。個人的には、日本の文化について広く知ってもらいたいと思っている」

「なんか、すごい」

 そんな言葉しか出てこないのが、すごくもどかしい。

「千隼さんは、国を背負って働いているのね」

 こうして本人から話を聞くと、それが一層リアルになる。
 その責任は相当に大きく、些細なミスが国家間の軋轢を生みかねない。気の抜けない大変な仕事なのだと、あらためて感じた。

 だからこそ、自宅にいるときくらいは気持ちよく過ごしてほしい。
 私のできることは少ないかもしれないが、彼を支えられるようにがんばろうと密かに決意した。
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