愛を秘めた外交官とのお見合い婚は甘くて熱くて焦れったい
* * *

 九月に入ったというのに、まだまだ蒸し暑い日々が続いている。

 ベルギーは年間を通して日本よりも気温が低いが、今の季節が観光にもベストシーズンと言われている。
 とはいえ朝晩はずいぶん冷え込むらしく、体調管理が難しそうだ。千隼さんは元気だろうかと、朝目を覚ますたびに気にかかる。

 午前中に家事を済ませて、午後から店の準備へ出向く。

 時間になり、店を開けてしばらくした頃に、千隼さんの同僚の方が顔を出してくれた。
 前に彼らと会ったのは、私がベルギーへ行く前になる。

櫛田(くしだ)さんに山科(やましな)さん、でしたね?」と問いかければ、「よく覚えてくれていましたね」と驚かれた。

「仕事柄、顔と名前を覚えるのは得意なんですよ」

 感心するふたりを、席に案内した。

 櫛田さんは以前、千隼さんが『ついてきてしまった』と引き連れてきた男性で、その後も何回か来てくれていた。それがときには複数人になることもあり、山科さんも一度だけ来てくれたと記憶している。

 櫛田さんは千隼さんの一年後輩で、温和な雰囲気の男性だ。明るく親切な男性で、千隼さん同様に会話をつなぐのがとても上手い。

 山科さんは、櫛田さんの同期だと聞いている。
 女性としては背が高く、スーツを着こなす姿が同性ながらカッコいいと思う。きりっとした顔立ちの美人で、きっと優秀な人なのだろうと想像している。
 女性の同僚は彼女しか見かけたことがなく、彼女のことは深く印象に残っていた。
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