愛を秘めた外交官とのお見合い婚は甘くて熱くて焦れったい
「大変でしたね」

 私を労わる櫛田さんの言葉に、山科さんもうなずいて同意する。

「せめてお店の応援につながるように、同僚を誘って今後も顔を出させてもらいますね」

 櫛田さんの申し出ありがたい。

「ありがとうございます。ゆっくりしていってくださいね」

 ふたりの気遣いに感謝しながら、その場を後にした。

 仕事を終えて自宅へ帰ると、櫛田さんたちが来てくれたことがうれしくて、早速メールで千隼さんに知らせた。

 後に彼からは【俺の隠れ家が侵食されていくようだが、気遣いはありがたいな】と返信があり、その言い分に思わず笑ってしまう。
 相変わらず千隼さんは忙しくしているようだが、冗談が飛び出すくらいには元気そうでほっとした。

 ピンチに陥ってあらためて考えてみると、紅葉亭はたくさんの人に支えられているのだとわかる。
 それは日を開けず来てくれる常連客であり、店を盛り上げようとがんばってくれている従業員でもある。
 当然、私の一番の味方は千隼さんだ。彼が私を自由にさせてくれているからこそ、こうして店を再び軌道に乗せられた。

 紅葉亭の再開は人づて広まり、客足も順調に戻っている。
 ひとまず危機は脱したようだと、私も祖父も安堵した。
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