愛を秘めた外交官とのお見合い婚は甘くて熱くて焦れったい
 九月の中旬になり、退院した父が自宅に戻ってきた。

 久ぶりの帰宅に、父はほっとした表情になる。
 でも次の瞬間には、私が帰国して以来、何度も目にした辛そうな顔になった。

「小春には迷惑をかけてばかりで、本当にすまない」

「やめてよ、あらたまっちゃって。迷惑だなんて、まったく思ってないから」

 父を悩ませるのは不本意で、慌てて否定した。

「退院できたとはいえ、これからますます負担をかけてしまうな」

 悲しそうな顔をして、ケガをした方の足に視線を落とした。

 他界した祖母が長く体を悪くしていたのもあり、家はバリアフリーになっていたのは幸いだ。
 父には、とにかくこの生活に慣れることを優先してほしい。
 
 そんな私の思いとは裏腹に、父はもう少し体力が戻ったら座りながらでも店を手伝いたいと言い出した。
 焦る気持ちはわからなくもないが、その結果ケガした箇所を再び痛めてしまっては意味がない。
 祖父も交えて何度か話し合いを重ねると、父はようやく納得してくれた。しかし、それでもせめて少しでも役に立ちたいと譲らない。

 そこではじめたのが、新しいメニューの開発だ。
 それくらいなら負担も大きくないだろうからと、自由にしてもらうことにした。
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