愛を秘めた外交官とのお見合い婚は甘くて熱くて焦れったい
「そうだ、小春さん。今度、時間があったら私のお薦めのカフェに行かない? チョコレートの専門店で、どのスイーツもとっても美味しいのよ」

「カフェ、ですか?」

 踏み込んだ関係を求められて、戸惑いを隠せない。

「仕事にお父様のことに、疲れてしまうでしょ? たまには息抜きも必要よ。ねえ、大将。小春さんを誘ってもいいかしら?」

 私の後方にいる祖父に問いかける。
 戸惑う私をチラリと見た祖父は、こちらの返事も確認せずに山科さんに向けて首を縦に振った。

「ほら、大将の許可も出たわ」

 いろいろと手いっぱいで、帰国してから個人的な外出はほとんどしていない。
 そこには、忙しさに加えて千隼さんへの遠慮もあった。

 海外で奮闘している彼を放って、自分だけ遊び歩くわけにはいかないと思っている。
 そうでなくても、父が大けが負ったという事実が心に影を落とす。なにかを楽しもうという気にはなれずにいた。

「そう、ですね」

 私が必死になる姿は、祖父や父にとって負担になっていたかもしれない。

 実際に、父からは気晴らしでもしてくるように何回か言われている。
 祖父だって言葉にこそしなかったものの、山科さんの言葉にうなずいたくらいだから思うところがあったのだろう。

 とはいえ、一緒に出掛ける相手が山科さんなのも妙な話だ。
 彼女はあくまで千隼さんの同僚で、親しくなったとはいえ友人というわけではない。

 どうしようかと迷ってしまうが、そうこうしている間に山科さんはどんどん話を進めていった。

「今度の日曜日は、ここも休みだったわね? それなら……」

 そうして彼女の勢いに乗せられて、気づけば週末の予定が決まっていた。
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