愛を秘めた外交官とのお見合い婚は甘くて熱くて焦れったい
 当日になり、精いっぱいオシャレをする。
 雑誌で学んだようにナチュラルに見えるしっかりメイクを施し、髪も顔の周りに後れ毛を残しながら低い位置で無造作なお団子にまとめた。

 カジュアルすぎる服装は避けて、ざっくりとした編み目のベージュのニットにオフホワイトのパンツを無難に合わせる。

「変じゃないかな」

 自室の姿見の前で左右に身を捩りながら、おかしくないかくまなく確認した。

 スタイルのよい山科さんの隣に立つのは、どうしても気後れする。
 これで大丈夫だと絶対的な自信はなにをしても持てないが、少なくとも年相応に落ち着いた格好になっているはずだと、ようやく納得した。

「いけない。遅れちゃう」

 さっと時計に視線を走らせたところ、意外と時間が経っていたことに気づく。慌てて玄関に向かいながら、リビングにいるだろう父らに「出かけてくる」と叫んだ。

 せっかく身なりを整えても、そんな言動をしては台無しだ。わかってはいるものの、時間が迫っているのに焦ってはしたない振る舞いをしてしまう。
 深呼吸で落ち着きを取り戻し、足早に駅に向かった。

 山科さんとは、自由が丘駅で待ち合わせしている。
 東京に住んでいるとはいえ、一度も行ったことのない駅だ。オシャレな街というイメージが強く、自分には合わないと決めつけていた。
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