愛を秘めた外交官とのお見合い婚は甘くて熱くて焦れったい
 その後は当たり障りのない話をしながら、スイーツを堪能した。
 私のオーダーしたフォンダンショコラは、苦みが特徴のエクアドル産のカカオ豆が使用されている。ガナッシュにはヘーゼルナッツのペーストがチョコに加えられており、粒のカリカリとした食感が面白い。

「本当に美味しいです!」

「喜んでもらえたみたいでよかったわ」

 私の反応に、山科さんは満足そうにうなずいた。

「それにしても、結婚早々に離れ離れになるなんて残念ね」

 会話は、私たち夫婦の話題へ移る。
 彼女との共通点と言えば、千隼さんか紅葉亭くらいだから仕方がない。

 それでもプライベートを明かすのはなんとなく抵抗があったが、話をはぐらかせるほどの話術を持ち合わせてはおらず。聞かれるまま、応えられる範囲で話した。

「そうですね。千隼さんには、すごく申し訳なくて」

 山科さんが紅葉亭に来てくれたときは、祖父もいる手前、遠慮があったのだろう。
 千隼さんについては再開して一度目の来店で少し触れられただけで、とくに詳しくは聞かれていなかった。

「まあね。でも、彼も独身気分で自由にできるからいいんじゃないかしら?」

「え?」

 聞きようによっては浮気を連想するような言葉に、つい声をあげた。
 意味深な発言をした彼女は、変わらず綺麗な笑みを浮かべている。

「ほら。帰りが遅くなっても、申し訳ないと感じる必要もないでしょ」

 そういう意味かと、密かにほっとする。

「え、ええ。そうですね」

 着任直後は特に忙しくて、千隼さんは遅い帰宅が続いていた。
 彼はことあるごとに『一緒にいられなくてすまない』と謝っていたが、独身だったならそんな気遣いも不要だ。
 そう考えると、なんだか私の存在が彼を苦しめていたような気になってしまう。
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