愛を秘めた外交官とのお見合い婚は甘くて熱くて焦れったい
 それ以降も、なにかと千隼さんと顔を合せるようになっていく。

矢野(やの)父娘の仲の良さが羨ましい』

 カウンターの端の席に座った義父は、親子で働く私たちをいつも恨めしげに見ていた。
 そして、ことあるごとに『羨ましい』と連呼し、自分も息子と親しい関係を築きたいと望んだ。

 その結果が、千隼さんを紅葉亭に頻繁に呼び出すという、彼にとってはあまりにも迷惑な行動だった。

 ときには強引に席に着かせることもあり、千隼さんは文句を言いつつ、結局は最後まで父親に付き合っていた。

 父らは昔を懐かしみつつ、たまに外交官時代の話も混じる。
 当時の千隼さんはすでに外交官を目指していたのもあり、ふたりの話に興味があったのかもしれない。
 なんだかんだ言っても楽しげな三人の様子を、私は微笑ましい気持ちで眺めていた。

 彼が就職してからは、さすがに紅葉亭へやってくる機会はなくなっていた。
 少しちぐはぐな千隼さんたち親子のやりとりがおもしろかっただけに、会えなくなってしまったのはなんとなく残念に感じる。
 でも、日々の忙しさにそんな記憶は薄れていった。
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