愛を秘めた外交官とのお見合い婚は甘くて熱くて焦れったい
「ずいぶん気温が上がってきたから、そろそろ冷たいメニューの検討をはじめた方がいいかも」
暗い思考を振り払いながら、仕事モードに頭を切り替える。
紅葉亭は祖父の代から継いでいる定番のメニューに加えて、季節限定の料理や、その日の仕入れや父の気分でお薦めの一品を用意している。個人経営のため時季やタイミングの明確なルールはなく、気候や客の反応から肌感覚で決めている。
「そうだな。とりあえず今日は、新鮮なウドが入ったから、それを使った料理を用意するつもりだ」
ウドは都内でも栽培されており、知り合いの農家から手に入れたという。ウドを使った料理で私が好きなのは、天ぷらやきんぴらだ。
「今日は、酢味噌和えにしてみようかと考えている。さっぱりして、暑い日にはぴったりだ」
父のつくるものはどれも美味しいのを知っているから、まだ食べたこともないのについ口もとが緩んだ。
お酢をつかうのなら、お酒はあまり香の強くないものが合いそうだ。酸味も控えめの方が、料理の味を邪魔しないだろう。
尋ねられたらどんな日本酒を勧めるかを考えながら、準備に取り掛かった。
時間になり、店を開ける。
一時間と経たないうちに、五割ほどの席が埋まった。そのほとんどが、なじみの客だった。
それから、海外からのお客様もやってくる。
ここ数年は外国の方が来店する頻度が増えており、予期せぬところでフランス語や英語が役に立っている。
もちろん父は流ちょうに話せるため率先して声をかけているのだが、それを目にした常連客らは何事かと一様に驚いた。
「二代目って、国際派だったんだな」
「そういやあ、外交官だったって言ってたな」
常連客にからかいと尊敬が混じったように言われて、父が照れ笑いをする。
「昔取った杵柄ですよ」
私も拙い言葉で料理やお酒を説明し、満足してもらえるように尽くしている。そのやりとりが勉強にもなるからありがたい。
暗い思考を振り払いながら、仕事モードに頭を切り替える。
紅葉亭は祖父の代から継いでいる定番のメニューに加えて、季節限定の料理や、その日の仕入れや父の気分でお薦めの一品を用意している。個人経営のため時季やタイミングの明確なルールはなく、気候や客の反応から肌感覚で決めている。
「そうだな。とりあえず今日は、新鮮なウドが入ったから、それを使った料理を用意するつもりだ」
ウドは都内でも栽培されており、知り合いの農家から手に入れたという。ウドを使った料理で私が好きなのは、天ぷらやきんぴらだ。
「今日は、酢味噌和えにしてみようかと考えている。さっぱりして、暑い日にはぴったりだ」
父のつくるものはどれも美味しいのを知っているから、まだ食べたこともないのについ口もとが緩んだ。
お酢をつかうのなら、お酒はあまり香の強くないものが合いそうだ。酸味も控えめの方が、料理の味を邪魔しないだろう。
尋ねられたらどんな日本酒を勧めるかを考えながら、準備に取り掛かった。
時間になり、店を開ける。
一時間と経たないうちに、五割ほどの席が埋まった。そのほとんどが、なじみの客だった。
それから、海外からのお客様もやってくる。
ここ数年は外国の方が来店する頻度が増えており、予期せぬところでフランス語や英語が役に立っている。
もちろん父は流ちょうに話せるため率先して声をかけているのだが、それを目にした常連客らは何事かと一様に驚いた。
「二代目って、国際派だったんだな」
「そういやあ、外交官だったって言ってたな」
常連客にからかいと尊敬が混じったように言われて、父が照れ笑いをする。
「昔取った杵柄ですよ」
私も拙い言葉で料理やお酒を説明し、満足してもらえるように尽くしている。そのやりとりが勉強にもなるからありがたい。