Hush night


「ほら、もう着いたから。さっさと帰っちゃって」


ちょうど良いタイミングで車が止まると、弾さんは迷惑そうにわたしたちを追っ払った。


「おー喜んで帰るわ」


コントのような麗日と弾さんのやり取りを微笑ましく思いながら、車から降りて、麗日の手に引かれて住処へと向かう。


エレベーターで18階につき、彼の部屋へと入ると同時に。

彼の唇が、ちゅっとおでこに触れた。


不可抗力にもドキッとしていると、彼は揶揄うようにわたしの瞳を捉えて言う。



「いっしょに風呂入るか?」

「……っ、な、」


「ん、どーする?」


じりじりと近づいてくる麗日。

これはやばい、と焦って顔の前で弱々しくバッテンを作る。


「…………だめ、」


すると、わたしの両手を退けて、麗日は可笑しそうに顔を覗き込んできた。


「じゃ、また今度な?」


……恥ずかしい、と思うけれど。

その言葉にゆっくりと頷くと、彼はぽんっとわたしの頭に手を乗せた。


麗日は絶対に、わたしの嫌がることをしない。

嫌だと言えば、ちゃんとわたしの意見を尊重してくれるし、わかってくれる。


その優しさが無限のように溢れ出てくる彼は、わたしの冷え切った心を徐々に溶かしてゆく。

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