姉の許婚に嫁入りします~エリート脳外科医は身代わり妻に最愛を注ぐ~
 笑顔で手を振った。友人たちのあとには親族一同がやって来る。

 そこには姉の姿もあった。

「百花、雅貴さん、結婚おめでとう」

 着物姿の姉は、私たちに屈託のない笑みを浮かべる。

「ありがとう」

 私と雅貴さんは揃ってお礼を言った。

「お料理がめちゃくちゃおいしくて感動しちゃった。あんなに豪華なフレンチを食べたのは生まれて初めてだよ」

 メニューにはこだわったのでうれしかった。でも、一方的に破談にした雅貴さんを前に、あまりにも能天気な発言ではないだろうか。

 姉の隣には、つい先日海外でふたりきりの結婚式を挙げ、めでたく義兄になった禎人さんがいる。

 禎人さんは雅貴さんが姉の元許嫁だと知っているので、こうして対面するのは少し気まずそうだ。

 雅貴さんはというと、「それはよかったよ」と笑みをたたえていた。私や禎人さんとは裏腹に、当の本人である雅貴さんと姉にはまるでわだかまりがないようだ。

 でも本当にそうなのだろうか。

 ここに至るまで、雅貴さんと姉の間でどんな話し合いがおこなわれたのか、私は知る由もない。

 実際は、姉はあえて能天気に振る舞っているだけなのかもしれないし、雅貴さんは胸の痛みを押し隠しているのかもしれない。上辺だけを見て判断はできなかった。

 少なくとも、好意を抱いている姉に振られた雅貴さんがなにも感じていないはずはないだろう。

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