姉の許婚に嫁入りします~エリート脳外科医は身代わり妻に最愛を注ぐ~
「だから雑に扱っていいです」

「なに言ってるの。初めてじゃなくても大切にするよ」

 私を愛していないのに、優しい言葉をかけてくれる雅貴さんは本当に素敵な人だ。なんだか涙が出そうになった。

 彼に委ねよう。

 そう決めたのに、彼はゆっくりと身を起こす。

 なにがどうなっているのかわからなかった。

「……しないのですか?」
 
「うん。大切にしたいからね」

「大切に抱いてくれるんじゃないんですか……?」

「百花、震えてる」

 ささやかれ、自分が小刻みに震えているのに気がついた。

 この年まで未経験でいたせいか、本当はセックスするのが怖いだなんて。

「これは、ちがっ……」

 彼に知られたくなくて必死に否定する。

「それに、泣き出しそうな顔をしてるよ」

「それはもっとちがっ……」

「無理しなくていい。それくらい嫌なんだろ」

「……え? 嫌?」

「ああ。俺とキスすらしたくなかったんだから、抱かれたくないのは当然だ」

 それは今日の結婚式で私が『誓いのキスは唇にしたくないです』と言ったことを指しているのだろうか。

 
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