姉の許婚に嫁入りします~エリート脳外科医は身代わり妻に最愛を注ぐ~
「色仕掛けなんて、百花はいけない子だな」

「ひゃっ……ん、ん……っ」

 左手を後頭部に回され、唇が重なった。舌を巧みに誘い出されて絡み取られる。

 雅貴さんからのキスは、私からしたそれとは全然違う。体中に甘い痺れが広がっていく。

「あ……雅貴さ……きゃっ」

 いきなり軽々と横抱きにされて、ベッドルームに運び込まれた。キングサイズのベッドに降ろされ、覆い被さってくる彼を見上げる。

 やっとやっと、このときが来た。

 一分の隙もなく整った彼のきれいな顔が、いつもよりも艶めかしく感じる。心臓がドキドキしすぎて壊れそうだ。

「本当にいいの?」

 確認するように問いかけられた。いいに決まっている。

「……はい。好きじゃなくてもできます……」

 雅貴さんが私を好きじゃなくても。

 私はあなたが好きだから。

 私の頬に触れようとして彼がぴたりと止まる。

「好きじゃなくても?」

「はい」

 覚悟はできている。

 彼に身を委ねる準備は整っているのに、体の上からすっと気配が消えた。

「……え?」

 身を起こした雅貴さんがなぜか切なそうな表情をしている。

 いったいどうしたのだろう。

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