姉の許婚に嫁入りします~エリート脳外科医は身代わり妻に最愛を注ぐ~
「あの……」

 私はなにかいけないことを口走っただろうか。中断された理由がわからず当惑してしまう。

「疲れたな。少し眠ってもいい?」

 出し抜けにそう問われ、ぱちぱちと瞬きをする。

「はい……」

 了承するしかなかった。雅貴さんはすぐに長い睫毛を伏せる。

 あっという間に眠ってしまい、私は途方に暮れた。

 また玉砕……?

 緊張の糸が切れ、へなへなと力が抜ける。今回こそはうまくいったと思ったのに、雅貴さんは手強い。
 
「しかたないよね。朝早くから運転してくれたんだもの」

 彼が疲弊するのは無理もないだろう。私を元気づけるためにここまで連れてきてくれたのだ。それなのに一気に求めすぎてしまった。

 抱いてもらえなかったのは残念だけど、熱いキスをしてくれたのだ。それで十分すぎるくらいだ。彼の唇の感触はまだ鮮やかに残っている。思い出すだけで体がとろけてしまいそうだった。

「幸せな一日をありがとうございます。おやすみなさい、雅貴さん」

 私も少し眠ってからお風呂に入ろう。

 熟睡している雅貴さんが起きないように注意し、ぎゅっと抱きついた。


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