姉の許婚に嫁入りします~エリート脳外科医は身代わり妻に最愛を注ぐ~
 午後六時半より少し早めに待ち合わせ場所に到着した。

 そのとき姉から【ごめん! 急に残業になっちゃった。代わりに禎人さんにお菓子を持って行ってもらうね】とメッセージが届く。

 わざわざ姉の夫の禎人さんに来てもらうのは申し訳ない。それなら私がお姉ちゃんの会社まで受け取りに行くよと返信するも、禎人さんはすでにこちらへ向かっているという。

 そわそわしながら十五分ほど経った頃、スーツ姿の禎人さんが小走りでやって来た。

「百花ちゃん、待たせちゃってごめんね。これ、凛花から預かったお菓子だよ」

 きれいな紙袋を差し出され、両手で受け取る。

「わざわざすみません」

 私は恐縮するばかりだ。なんだかものすごく食いしん坊みたいだし。

「気にしないで。ていうか、このあとは凛花と晩ごはんを食べる予定だったんだよね? 百花ちゃんさえよければ、俺とどう?」

 思いがけず禎人さんに誘われた。

「え?」

「凛花がイタリアンのレストランに予約を入れているみたいなんだ」

「そうなんですね。じゃあ、ぜひ」

 少し驚いたけれど快諾した。姉がお昼過ぎにはお気に入りのお店を確保していたそうだ。禎人さんとはあまり話したことがないし、これはこれでいい機会かもしれない。

 禎人さんは人当たりのよい笑みを浮かべ、レストランまで先導してくれる。

 
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