姉の許婚に嫁入りします~エリート脳外科医は身代わり妻に最愛を注ぐ~
 少し歩いた先にあったのは、落ち着きのある佇まいの素敵な空間だった。

 ゆったりとした店内には石窯があり、オーダーを受けてからピザを焼いてくれるそうだ。いいにおいが店内に広がっていて、食欲をそそられる。

 前菜の盛り合わせとピザ、自家製の生パスタとお肉料理を注文し、シェアすることにした。飲み物はふたりともノンアルコールだ。禎人さんはお酒に弱いらしく、普段からほとんど飲まないのだという。

「そうなんですか。姉は酒豪ですよね」

 私と禎人さんの共通点といえば姉だから、自ずと姉の話題になった。

「うん、浴びるように飲むよね。だから凛花に片想いしていたときは気を引くために、俺もお酒が好きなふりをしていたんだよ。『おすすめのワインを取り扱ってるお店があるから一緒に行こうよ』とか声をかけてさ。まあすぐに下戸だってばれたんだけど」

 禎人さんは苦笑いした。

「ふたりが付き合い始めたのは禎人さんからのアプローチだったんですね」

 姉からはきっかけを聞いていなかったので興味を引かれた。

「そう。凛花は俺をただの同僚としか思ってなかったみたい。なんとか付き合えて、プロポーズを受け入れてもらったときは本当にうれしかったなあ」

禎人さんは食事をしながら、懐かしそうに話を続ける。

「凛花に許嫁がいるって聞いたのは、そのあとだったんだよね」

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