姉の許婚に嫁入りします~エリート脳外科医は身代わり妻に最愛を注ぐ~
「そんなことは……」

「いいんだ。どんな理由でも、俺が凛花の夫になれたんだからね」

 そう自分に言い聞かせる禎人さんの気持ちが痛いくらいにわかった。

 私も同じだ。どんな理由でも、私が雅貴さんの妻になれたのだからそれでいい。

 それでもときどきは切なくなるのを、なんとか折り合いをつけながら暮らしているのだ。

「百花ちゃんはさ、どうして雅貴さんと結婚するって決めたの?」

 禎人さんに問われた。

 彼は私に胸の内を明かしてくれたのだ。私だけごまかすのはフェアじゃない。

「ずっと昔から雅貴さんが好きだったんです」

 口にするのは初めてだった。

「そっか」

 禎人さんはとくに驚いた様子もなかった。もしかすると私の気持ちに気づいていたのかもしれない。

「姉も雅貴さんも知らないですけど」

「雅貴さんも?」

「はい」

「早く伝えられるといいね」

 その言葉に、禎人さんには全部見透かされているような気がした。

 私が雅貴さんを好きなことだけじゃなく、雅貴さんが姉を好きなことも。

 禎人さんに話を聞いてもらえて、少しだけ心が楽になった。なんだか同士のようで親近感を持つ。

「俺でよければいつでも相談に乗るからね」

「ありがとうございます」

 心強い味方ができた気分だ。

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