姉の許婚に嫁入りします~エリート脳外科医は身代わり妻に最愛を注ぐ~
 数分後には、禎人さんはくも膜下出血をしていると迅速に診断が出た。脳血管撮影をし、脳動脈瘤の破裂が原因だと特定される。

 専門医である雅貴さんに引き継がれ、緊急に開頭手術をすることになった。

「大丈夫だ」

 雅貴さんは姉を安心させるようにささやき、手術の準備に向かう。

 私と姉はスタッフに、手術を受ける患者家族用の控え室に案内された。

 そこには手術室のカメラと直結しているモニター画面があり、手術の様子がリアルタイムで映し出されるそうだ。久宝総合病院は情報の公開が徹底されている。

 ほどなくして手術が始まった。

「だめ……怖くて見られない」

 姉はモニター画面から目を背ける。

 私はスタッフの説明を受けながら、まじろぐことなく見守った。血は苦手だけれど、雅貴さんが執刀しているのだ。

 脳という神聖な領域に唯一メスを入れられるのが脳神経外科医だという。スタッフによると、雅貴さんは若手の医師でありながら卓越した技術を持っていて、その手術は緻密で驚くほどに正確だそうだ。

 迷いも無駄もない雅貴さんのメス捌きに見惚れてしまう。美しいとさえ感じた。私には彼の手が神の手のように見える。

「もし禎人さんが助からなかったらどうしよう……。私、禎人さんがいなかったら生きていけない……」

 手術時間が経過するにつれ、姉は精神的に不安定になった。ぽろぽろと涙を流し、私に縋りついてくる。

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