姉の許婚に嫁入りします~エリート脳外科医は身代わり妻に最愛を注ぐ~
 姉がこんなにも脆かったなんて知らなかった。

 それほどまでに禎人さんを愛しているのだろう。

『凛花はおじいさまに反発したい一心で俺を選んだのかもしれないね』とつぶやいていた禎人さんに教えてあげたい。いや、元気になって直接姉の口からそれを聞いてほしいと願わずにはいられなかった。

 開始から二時間後、脳動脈瘤のクリッピング手術は成功した。

 引き続き禎人さんは集中治療室で厳密な管理がおこなわれるそうだ。

 麻酔から目覚めた禎人さんと少しだけ面会させてもらった。「迷惑をかけてごめん」とつぶやいた禎人さんは、またすぐに眠ってしまう。私や姉がわかるみたいだったので、ひとまずはほっとした。

 その後、雅貴さんから手術内容と今後についての説明を受ける。

 禎人さんの頭の骨を切り、破裂した脳動脈瘤の根もとをクリップで閉じて、脳内の出血を無事に取り除いたそうだ。

「手術は成功したが、くも膜下出血は発症後二週間が重要で、その期間は不安定な状態が続く」

 まだ予断は許さないのだ。入院期間は短くても一、二カ月になるという。

 合併症や後遺症について聞いていたら、姉が私にもたれかかってきた。

 今にも倒れてしまいそうだ。

「お姉ちゃん、大丈夫?」 

「なんだかクラクラしてきた……」

「少しベッドで横になったほうがいい」

 雅貴さんがスタッフに指示し、姉は別室へ連れていかれた。

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