姉の許婚に嫁入りします~エリート脳外科医は身代わり妻に最愛を注ぐ~
「いやいや、私のほうが引き留めてしまったね。実は百花さんには改めて礼を言いたいと思っていたんだ」
「お礼ですか?」
おじいさまになにかをした記憶はなく、首をかしげた。
「雅貴と結婚してくれてありがとう」
「そんな……」
かしこまってお礼を言われたら、どう反応していいのかわからなかった。
「今さら聞くのもおかしいが、百花さんは凛花さんのようにほかに想いを寄せている人はいなかったのかね?」
「はい、いません」
「そうか……。それは本当によかった」
雅貴さんのおじいさまは胸を撫で下ろし、深く息をついた。なにかわけがあるようだ。
「すまないね。私の罪悪感を軽くしたいがために、今になってこんな質問をして。実は久宝家と三上家の縁結びについては、少々込み入った事情があってね。昔話を聞いてもらえるだろうか」
私がうなずいたら、おじいさまは過去に思いを馳せるように目を瞑り、ゆっくりと語り始めた。
ときは昭和初期に遡る。
雅貴さんのおじいさまは私の祖父と同い年で、第二次世界大戦の徴兵を寸前で免れた年齢だそうだ。
当時、おじいさまには深く想い合っている女性がいた。その人の名前は千代子さんという。
「千代子さん?」
「ああ。百花さんの祖母だ」
「えっ」
「千代子さんは早世したから、百花さんは会ったことがなかったね」
「はい。写真でしか知りません」
「お礼ですか?」
おじいさまになにかをした記憶はなく、首をかしげた。
「雅貴と結婚してくれてありがとう」
「そんな……」
かしこまってお礼を言われたら、どう反応していいのかわからなかった。
「今さら聞くのもおかしいが、百花さんは凛花さんのようにほかに想いを寄せている人はいなかったのかね?」
「はい、いません」
「そうか……。それは本当によかった」
雅貴さんのおじいさまは胸を撫で下ろし、深く息をついた。なにかわけがあるようだ。
「すまないね。私の罪悪感を軽くしたいがために、今になってこんな質問をして。実は久宝家と三上家の縁結びについては、少々込み入った事情があってね。昔話を聞いてもらえるだろうか」
私がうなずいたら、おじいさまは過去に思いを馳せるように目を瞑り、ゆっくりと語り始めた。
ときは昭和初期に遡る。
雅貴さんのおじいさまは私の祖父と同い年で、第二次世界大戦の徴兵を寸前で免れた年齢だそうだ。
当時、おじいさまには深く想い合っている女性がいた。その人の名前は千代子さんという。
「千代子さん?」
「ああ。百花さんの祖母だ」
「えっ」
「千代子さんは早世したから、百花さんは会ったことがなかったね」
「はい。写真でしか知りません」