姉の許婚に嫁入りします~エリート脳外科医は身代わり妻に最愛を注ぐ~
 さらなる衝撃が走り、私は度肝を抜かれた。三上家と久宝家の許嫁の始まりは、我が祖父の提案だったのだ。

「私はすぐさま賛成したよ。男同士の勝手極まる話で呆れただろう? 千代子さんも私の妻もなにを言い出すのかと唖然としていた。しかし、どちらの夫婦にもなかなか子が授からず、ようやく生まれたのは互いに男児ひとりずつだった。そのときは妻に『あなたがたが荒唐無稽な計画するからですよ』と嫌みを言われたな。あの時代にしてはなかなかはっきりものを言う魅力的な女性だった」

 おじいさまは楽しそうに笑った。そこには妻になった人へのたしかな愛情を感じた。

「私と勇さんの計画は失敗に終わった。だが月日は流れ、互いの息子たちがそれぞれ結婚し、偶然にも同じ年に雅貴と凛花さんが生まれたんだ。そして我々の積年の願いを叶えるために、今回こそはと許嫁にしたんだよ」

 いまどき許嫁なんて時代錯誤だと思っていたけれど、雅貴さんと姉の縁結びは祖父たちの執念の塊だったのだ。

「しかしそれもまた土壇場で破談となり、やはり私と千代子さんにはわずかな縁もなかったのだなと打ちひしがれた。これが最後と一縷の望みをかけて、百花さんにお願いしたんだ」

「そういう経緯があったのですね……」

 今、やっとすべてがつながって、疑問に思っていたことが払拭された。

< 67 / 95 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop