姉の許婚に嫁入りします~エリート脳外科医は身代わり妻に最愛を注ぐ~
「ああ。だから百花さん、私にできることがあればなんでも言ってくれ。百花さんは恩人のようなものだから」

「恩人だなんて……」

 私はただ雅貴さんが好きだから彼と結婚したのだ。しかもおじいさまのためだと口実にした。私はそんなふうに言ってもらえるような善良な人間じゃない。

「私からすれば、おじいさまのほうが恩人です」

「私のほうが恩人?」

「はい……。雅貴さんと結婚できたのは、おじいさまのおかげだから。私は彼の妻になれて幸せです」

 心からの言葉だった。

 私に元気がなかったら、いつもさりげなく察して力づけてくれる雅貴さん。ひまわり畑に連れて行ってもらえたのは本当にうれしかった。サプライズの打ち上げ花火には感動しすぎてどうにかなりそうだった。

 義兄の禎人さんが病気になったときには命を救ってくれた。私や姉が不安にならないように尽力してくれた。

 そして、瑠奈さんの言葉にかけらも惑わされず、私を信じてくれた。そんな雅貴さんと結婚できたのは、私の人生で一番の幸運だ。

「だからおじいさま、罪悪感なんて持たないでくださいね」

「……ありがとう、百花さん」

 おじいさまはぐっと目頭を押さえた。少しでもおじいさまの心が軽くなれたなら、私もうれしい。

 そこへ、雅貴さんが戻ってきた。

 
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