姉の許婚に嫁入りします～エリート脳外科医は身代わり妻に最愛を注ぐ～

　とにかく禎人さん本人にも会ってみないことには判断できなかった。

「嫌だ、離婚しないからね、って言って、勝手に家を飛び出してきちゃった」

「うちに泊まるのは問題ないが、禎人さんに連絡は入れておいたほうがいい。それに、もっときちんと夫婦で話し合うべきだよ」

　雅貴さんがやんわりと姉を諭した。

「話し合ったら離婚が確定しそうで怖いんだもの」

　姉は頑なに拒んだ。本当に禎人さんのことになるとてんでだめになる。私も雅貴さんも当惑するしかなかった。

　
　姉がゲストルームに泊まり始めて三日。

　禎人さんには私から電話で連絡を入れておいたけれど、姉は依然自宅に帰る気配がない。仕事には行っているものの、会社でも禎人さんと顔を合わせていないみたいだ。

　禎人さんには電話で『百花ちゃんと雅貴さんを巻き込んでごめん。しばらく凛花をよろしくね』と頼まれたし、彼のほうも今は姉を遠ざけたいようだ。本当にふたりはどうなっているのだろう。

「あ、そうだ。明日の帰り、遅くなるね」

　姉と一緒に晩ごはんの片付けをしていたとき、思い出したかのように告げられた。

「残業？」

「ううん。仕事が終わってから瑠奈ちゃんと飲みに行くんだ」

「……瑠奈さん？　お姉ちゃん、瑠奈さんとつながりがあったの？」

　まさかの名前が飛び出し、私は眉をひそめた。