姉の許婚に嫁入りします～エリート脳外科医は身代わり妻に最愛を注ぐ～

「禎人さんが入院してるとき、何度も病室へお見舞いに来てくれたのよ。瑠奈ちゃん、かわいくていい子だよね。しかもお酒が好きみたいで、意気投合しちゃった」

　私の与り知らないところで瑠奈さんが姉に接触していたとは思ってもみなかった。

「そうなんだ……」

「うん。禎人さんのことばっかり考えて落ち込んでいるのもつらいし、パーッと気分転換してくるね」

　姉は声を弾ませた。瑠奈さんはなにを企んでいるのだろう。なんだか悪い予感がする。

　
　翌日。その予感は的中したようだ。

　瑠奈さんと出かけ、夜遅くに帰ってきた姉は、なぜか私を露骨に避けた。

　しかも、今すぐ荷物をまとめてレジデンスを出て行くという。

「え？　自宅に帰るの？」

　私はゲストルームに向かう姉を追いかけた。

「そうじゃないけど……」

「じゃあどこに行くの？」

「まだ決まってないけど、とにかくここを出たいのよ」

　かなりお酒を飲んでいるのもあるのだろうか。姉の様子がおかしい。私と目も合わせてくれず、困惑してしまう。

「行き先がないのに出て行くのは看過できないよ」
　
　雅貴さんがやって来て、姉を制止した。

「雅貴さん……」

「それに、もう深夜だ。なにがあったのかは知らないが、とにかく一度冷静になって」