姉の許婚に嫁入りします～エリート脳外科医は身代わり妻に最愛を注ぐ～
　彼と結婚して四カ月。少しは愛してもらえていると思っていた。

　心のどこかでは、もしかしたら姉よりも、って。

　でも私は結局、雅貴さんの一番にはなれなかったのだ。

　昔、彼が言っていた通り、二番目に甘んじたら、一生二番目。そのことがこんなにもつらいとは知らなかった。

　私は浅はかで愚かだ。

　これほどまでに彼を好きになってから気づくなんて。

　彼を失いたくない。一番になりたい。でもそれが無理なら、彼の幸せのために私から身を引くべきかもしれない。それがこの四カ月、たくさんの幸せをくれた彼に対してできる唯一の恩返しだ。

　
　日が暮れてから改めて帰宅したら、姉がいなくなっていた。

「……お姉ちゃんはどこに行ったんですか？」

　何事もなかったかのように、雅貴さんに問いかける。不自然な態度を取ってしまうかもしれないと危惧していたのに、自分でも不思議なくらい平静を装えた。

「自宅に帰ったよ。禎人さんときちんと話し合うそうだ」

　それは離婚に向けてだろうか。

　姉は雅貴さんの愛を受け入れたのだろうか。彼の背中を抱きしめていたのだから、きっとそうだ。

　いずれにしても私の決断は揺るがない。姉に振られたから私でいいかという理由で、彼に選ばれるのは耐えられないと骨身に染みたから。

　少しでも傷口は浅いほうがいい。

　
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