姉の許婚に嫁入りします~エリート脳外科医は身代わり妻に最愛を注ぐ~
 雅貴さんのおじいさまに申し訳なく思うも、三上家の人間なら誰だっていいのだから、雅貴さんの妻が姉に変わってもなんら問題はないだろう。私と雅貴さんが離婚しても困る人はいない。それだけは救いだ。

「百花がどう思っていようと、離婚してあげられないよ」

 彼の答えは意外で心が掻き乱された。まさか姉に振られたのだろうか。でも私はもう代わりになるのは嫌だ。

「どうしてですか……?」

「始まりはどうあれ、必ず百花を幸せにすると誓ったから」

 その言葉に、私たちの結婚が決まったときの記憶が甦ってくる。

 たとえ彼が私を愛していないと知っていても、この上なくうれしかった。

 けれど今あのときに戻れるのなら、私はプロポーズを断っただろう。

「……私の離婚の意思は揺らぎません」

 話はいつまでも平行線でまとまらなかった。

 結局その日は合意に至らず、別々の部屋で眠ることになる。身を切られるような夜は長く、早く朝が来るのをただひたすら待ち侘びた。
 

 離婚の話が滞ったまま、数日が過ぎた。

 このままでは雅貴さんを説得できる気がせず、完全に膠着状態だ。

 姉が私を避けていた件については心配しなくていいと雅貴さんが言っていたけれど、姉からはなにも連絡はなく、禎人さんとどうなっているのかも知り得なかった。

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