シェフな夫のおうちごはん～最強スパダリ旦那さまに捕まりました～

　私がじっと明人さんを見つめていると、彼は真顔で深いため息をついた。
　そして、いつもみたいに冷静な表情で、穏やかな口調に戻り、柔らかい声で彼は言った。

「俺が波留と一緒にいたいんだよ。初めて会ったときから価値観が合って心地いいからこの子と暮らしたいと思った。それが君と結婚した理由」
「……明人さん」
「よそと比べて自分が劣るなんて思わなくていいよ。君の魅力は俺がよく知ってる」
「そ、そうですか」

　なんだか照れくさくなってきた。さっきまで落ち込んで悩んでいたのが嘘みたいに晴れていく。彼の言葉で。

「だいたい、他の野郎に君の魅力を知られてたまるものか」

　明人さんがめずらしく感情的に表情を歪めてそう言った。
　それが少し子どもっぽくて妙に親近感がわく。

　浅井さんの言う明人さんの裏の顔は私にとってはすごく新鮮で、それも彼の一部だと思うと愛おしくなる。

　ああ、私は気にしすぎだったんだ。
　ちゃんと彼の心がここにある。