愛の街〜内緒で双子を生んだのに、孤高の副社長に捕まりました〜
彼らしくない投げやりな言葉に、有紗は目を見開いた。

唖然とする有紗を見つめてどこか切ない笑みを浮かべた。

「……君を失ったから」

「龍之介さん……?」

「そうだろう? 君がいないこの街にいったいなんの意味がある? 君がいない未来にどうして興味を持てるんだ? 色がない世界をほひとりでやみくもに歩いているみたいだったよ」
 
龍之介の言葉に、有紗のうなじがチリリと痺れる。いったい彼はなにを言っているのだろう?

「有紗、ル・メイユールで君と過ごしたあの日の朝、君の手紙を読んだ時から、俺はそういう日々を過ごしてきた。君の気持ちはよくわかった。俺みたいにマスコミに追い回されている男は、君の未来を台無しにする。だから俺は君の希望通りにすると決めた。あの夜のことは……」
 
そう言って彼は顔を歪めた。

「だが……忘れることはできなかった。どんなに消そうと思っても、君への想いは消えなかった。有紗、俺はあの夜と変わらず、今も君を愛してる」
 
彼が口にする真っ直ぐな飾らない言葉が、有紗には理解できなかった。
 
あの夜の彼の愛は、ひと夜限りのものだと思っていた。それがそうではなかった……?

「愛してるんだ、有紗。だから俺は子供たちのことを知った時、そこに希望を見出した。たとえ君の気持ちが戻らなくても、あの夜愛し合ったの証が存在するなら、俺はいる意味がある。あの子たちのために生きていけると確信した」

「そんな……まさか」
 
あまりにも衝撃的な内容に、有紗の口から声が漏れる。それに龍之介が反応する。

「なぜ? 俺はあの夜君に『愛してる』と何度も何度も伝えたはずだ」

「でも、でも……」
 
……それは一夜限りの愛を交わす、男女の中だけの仮初の言葉だと思っていた。

朝になっても続くようなものではないと。
 
それがまさか、彼も自分と同じ気持ちだったなんて。

「有紗、もう一度はじめからやり直そう」

『もう一度はじめから』
 
彼の言葉に有紗の胸が熱くなる。
 
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