愛の街〜内緒で双子を生んだのに、孤高の副社長に捕まりました〜
愛する人に愛されていたのだという喜びが全身を貫いた。

そうだあの夜に戻れれば……!
 
——けれど。

「有紗、結婚してくれ。俺は君たち三人を生涯に渡り愛し抜くと誓うよ」

「けっ……こん……?」
 
掠れた声で聞き返すと、龍之介が頷いた。

「ああ、子供たちと四人家族になろう。俺の妻になってくれ」
 
愛する人が口にした、嬉しいはずのプロポーズに有紗の背中がぞくりとした。
 
——そんなこと、許されるはずがない。
 
頭の中で誰かが言う。その誰かは、有紗自身であり世間一般の常識だ。
 
日本屈指の名門天瀬家の長男である彼と、一般人でしかないただの秘書が正式に結婚する。そんなこと許されるはずがない。
 
あの夜、彼への想いを口にした自分は、無邪気だったと心底思う。

恋焦がれ愛してる言いながら、彼と生涯をともにすることなど考えもしなかったのだから。
 
そんな覚悟は微塵もなかったからこそ、口にできたのだろう。

「私……あの夜、まさか、龍之介さんがそう思ってるなんて知らなくて……だから……」
 
混乱する頭で、今はそれしか言えなかった。
 
龍之介が柔らかく微笑んだ。

「ゆっくり考えてくれ。たとえ君が俺を受け入れられなくても、俺の君たちへの対応も態度も変わらない。君に不利益なことは一切ないと約束する。だがこれだけは覚えておいてくれ」
 
龍之介が風になびく有紗の髪を一筋掴む。そしてそこへ口づけた。

「俺は生涯君だけを愛し抜く」
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