愛の街〜内緒で双子を生んだのに、孤高の副社長に捕まりました〜

チョコレートの甘いキス

これでは仕事のスケジュールを調整して休みを増やしても意味がないと思う時もあるくらいだ。

「私の第一秘書は優秀だが、上司のプライベートにも口を出すのがたまに傷だ」
 
龍之介の言葉に有紗は反論する。

「ですが、なんとしてでも上司のお休みを確保するのも秘書としての役割です」

「なにを言われても俺は止めるつもりはない。君たちと過ごす時間が俺にとっては癒しなんだ。むしろ絶好調だ」
 
そうまで言われてはもう黙るしかない。実際、彼が育児に参加するようになって有紗の負担は格段に楽になった。

なにより子供たちが彼との時間を楽しみにしている。
 
起きているうちに彼が帰ってこられない日は玄関で寂しそうに待っている時もあるくらいだ。

「なにも疲れを癒す方法がベッドで寝るだけとは限らないだろう。だけどどうしても君が心配だと言うなら、効果的な方法がある」
 
そう言って彼は引き出しを開けて、中から包みを取り出した。

それを手に立ち上がり、机を回り込んでこちらへやってきて、有紗に差し出した。

「リリーパリス……ですか?」
 
休みとチョコレート、いったいどう繋がるのかがわからずに有紗が首を傾げると、龍之介がにっこりとした。

「君にお土産だ」
 
そして包みを開ける。

「ここで……?」
 
有紗は尋ねると、当然だというように頷いた。

「約束を忘れたのか? 大事なことなのに」
 
彼が有紗にチョコレートを買ってきた時は、その場で食べるというあの約束だ。
 
もちろん忘れるはずがない。でも今はあの頃とは状況が違う。

あの頃は、彼が有紗を労う方法がこれしかなかった。だから大事な時間だった。

でも今は、私生活において全面的にバックアップしてもらっている。

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