愛の街〜内緒で双子を生んだのに、孤高の副社長に捕まりました〜
困ったなと有紗は思う。
その期待に答えることはできないからだ。秘書は業務上知り得た上司のいかなることも漏らしてはならない。
秘書としての心得の基本中の基本だ。
「ごめんね、仕事のことは話すわけにはいかないの」
その場の空気を壊さぬように、有紗なるべく柔らかく言う。すると有紗を誘った同期がくすくすと笑いだした。
「相変わらず真面目だね、真山さん。だから仕事のことを聞きたいわけじゃないんだって。会社のことになんて興味ないんだから。そうじゃなくて副社長個人のことを聞きたいの」
後のふたりも、「そうそう」と言って笑っている。
そう言われても結論は同じだった。
たとえ質問内容が、仕事に関係のない龍之介個人のことだとしても話すことはでない。
「ねえ、副社長って海外駐在時代、すごく女性関係派手だったじゃない? あれって今もなの? 帰国されてからはスクープされてないけど、相手が一般人だから? こっそり会う手配なんかも秘書の仕事のうち?」
「えー、それは悲しいかも!」
この場をどう切り抜けようかと思案する有紗をよそに、彼女たちは盛り上がる。
この質問についてはノーだった。
有紗が知る限り、龍之介が詩織以外の女性と会っているという事実はない。
天瀬商事では、セキュリティ面の都合から、
たとえプライベートな時間でも役員の居場所は会社が把握できるようになっている。
ほとんど休日もなく働く彼は、仕事以外は大抵はベリが丘のノースエリアにある自宅にいる。
おそらく詩織との結婚が決まったからだろう。遊びは終わりにして身を固めることにしたのだ。
わずかな休息を惜しむように、自宅にて詩織と会っているにちがいない。
とはいえ、それを言うわけにはいかなかった。
「真山さん? 本当のとこどうなの?」
「えーと、それもちょっと言えなくて……」
その期待に答えることはできないからだ。秘書は業務上知り得た上司のいかなることも漏らしてはならない。
秘書としての心得の基本中の基本だ。
「ごめんね、仕事のことは話すわけにはいかないの」
その場の空気を壊さぬように、有紗なるべく柔らかく言う。すると有紗を誘った同期がくすくすと笑いだした。
「相変わらず真面目だね、真山さん。だから仕事のことを聞きたいわけじゃないんだって。会社のことになんて興味ないんだから。そうじゃなくて副社長個人のことを聞きたいの」
後のふたりも、「そうそう」と言って笑っている。
そう言われても結論は同じだった。
たとえ質問内容が、仕事に関係のない龍之介個人のことだとしても話すことはでない。
「ねえ、副社長って海外駐在時代、すごく女性関係派手だったじゃない? あれって今もなの? 帰国されてからはスクープされてないけど、相手が一般人だから? こっそり会う手配なんかも秘書の仕事のうち?」
「えー、それは悲しいかも!」
この場をどう切り抜けようかと思案する有紗をよそに、彼女たちは盛り上がる。
この質問についてはノーだった。
有紗が知る限り、龍之介が詩織以外の女性と会っているという事実はない。
天瀬商事では、セキュリティ面の都合から、
たとえプライベートな時間でも役員の居場所は会社が把握できるようになっている。
ほとんど休日もなく働く彼は、仕事以外は大抵はベリが丘のノースエリアにある自宅にいる。
おそらく詩織との結婚が決まったからだろう。遊びは終わりにして身を固めることにしたのだ。
わずかな休息を惜しむように、自宅にて詩織と会っているにちがいない。
とはいえ、それを言うわけにはいかなかった。
「真山さん? 本当のとこどうなの?」
「えーと、それもちょっと言えなくて……」