御曹司と再会したら、愛され双子ママになりまして~身を引いたのに一途に迫られています~【極甘婚シリーズ】
双子を保育園に送り届けた有紗は、速足で駅を目指す。

保育園で母と離れるのが嫌だと泣くふたりと離れがたく、あやしているうちにギリギリになってしまった。
 
電車に飛び乗り、ぎゅうぎゅうの満員電車に揺られる。会社までは五十分電車に乗らなくてはならない。
 
本当は職場の近くに家を借りたかったが、家賃が高く諦めた。
 
双子を生むことに迷いはなかったし、生まれてからも後悔したことは一度もない。

でも先行きが明るいといえるかどうか、わからない。現実はやはり厳しかった。
 
有紗は電車の中の路線図に視線を送る。会社の駅から四駅先にある『ベリが丘』の文字にまた胸がツキンと鳴った。
 
懐かしい景色が頭に浮かぶ。
 
——新しい秘書さんはどんな方だろう? 

働きすぎの副社長をうまくセーブできる方だといいけれど。
 
そこで有紗は慌ててその考えにストップをかける。
 
彼と会わなくなってから二年も経つのに、ことあるごとに彼を思い出してこんなことを考えてしまう自分が情けない。

今はもう自分とは関係のない人なのに……。
 
十中八九、彼は結婚している。ならばこうやって彼を心配するのは、詩織の役割だ。
 
やがて電車が目的の駅につく。

有紗は浮かない気持ちのままたくさんの人に押し流されてホームへ降りた。
 
有紗が勤める老舗文具メーカー『花田文具』は、大きな通りから一本道を入った場所にある。築四十年の古い自社ビルの二階が有紗が所属する事務所だ。

「おはようございます」
 
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