ブラッドドールとヴァンパイア
一章
✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎
車が早朝の帝都を駆ける。
暁が空を統べる今日。
少女は暗闇の中、一人耽っていた。
(きれい……)
ここがどこかもわからないが、少女が断言できるのはただ一つ。
(わたしはまた、だれかにひつようとされるのね)
何かの隙間から差し込む光が、高い夜の星空に見えた。
ガタガタと揺られ、視界が安定しない。
脳の処理能力が低いからか、動かぬはずの光が流れ星のように思えた。
(このくりかえしは、いつまでつづくのかしら)
少女は、気づけば監禁され、気づけば暗闇に、気づけば見知らぬ誰かの家に……そればかりを何度も繰り返していた。
この日もまた、手足を拘束され寝ていたはずが、何かの箱に詰められているようだった。
あるところで揺れが収まった。
(もくてきちについたのかしら)
何処へ行こうとも、少女がすることは決まっている。
それを少女自身もわかっていた。
今回ので、もう、六回目だからだ。
また、揺れが始まる。
少女の目的地で待つ、目的の者のところへと運ばれるのだ。
(ごしゅじんさまにあったら、はじめましてっていうのよね。それから、わたしのことをつたえて、それから……)
少女は頭の中で何度も確認する。
するとーー
「御影圭様でしょうか?」
「ああ。配達か。ありがとな」
「仕事ですから。では、私はこれで」
(みかげ、けい……。それがわたしのあたらしいごしゅじんさま?)
少女が青年ーー圭に手渡される。
(ごしゅじんさま、どんなひとかな)
少女は圭を見ようと光の差し込んでいる方に目を近づけるが、揺れることもあり、上手く見えなかった。
✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎
(さてと……)
圭は大きな段ボールを抱え、自室に向かっていた。
中に入っているのは、昨日の夜に頼んだモノだ。
(本当は、こんなモノを使いたくはないのだが……)
だが、コレを使わなければ、やがて圭は死んでしまう。
誰だって、自分の命が天秤にかかれば、自分の命を取るものだろう。
圭はそう考えていた。
ビリビリ……と紙を破る音が部屋に響く。
(どんなモノが入っているのやら)
圭は、軽い気持ちで箱を開けた。
「! お前が……」
大きな箱には、小さな少女がすっぽり入っていた。
黒髪、黒目の小さな少女だった。
何処か儚げで、だが歳相応の幼さで溢れている。
だが残念なことに、顔はとても美しいのだが、服はボロ雑巾のように汚れていた。
少女は起き上がると、圭を見つめた。
(こんな少女を、俺は買ったのか……?)
嫌悪と気持ち悪さで吐き気がした。
今まで圭は、裏で取引している輩を好ましく思っていなかった……むしろ、軽蔑していた。
しかし、今は圭もその界隈に手を染めた一人だ。
こんな少女を、圭は自分が買っただなんて思いたくなかった。
後悔しても、もう遅い。
どのみち買うことになっていたのだろうから。
「っ……。君が吸血用人形か」
車が早朝の帝都を駆ける。
暁が空を統べる今日。
少女は暗闇の中、一人耽っていた。
(きれい……)
ここがどこかもわからないが、少女が断言できるのはただ一つ。
(わたしはまた、だれかにひつようとされるのね)
何かの隙間から差し込む光が、高い夜の星空に見えた。
ガタガタと揺られ、視界が安定しない。
脳の処理能力が低いからか、動かぬはずの光が流れ星のように思えた。
(このくりかえしは、いつまでつづくのかしら)
少女は、気づけば監禁され、気づけば暗闇に、気づけば見知らぬ誰かの家に……そればかりを何度も繰り返していた。
この日もまた、手足を拘束され寝ていたはずが、何かの箱に詰められているようだった。
あるところで揺れが収まった。
(もくてきちについたのかしら)
何処へ行こうとも、少女がすることは決まっている。
それを少女自身もわかっていた。
今回ので、もう、六回目だからだ。
また、揺れが始まる。
少女の目的地で待つ、目的の者のところへと運ばれるのだ。
(ごしゅじんさまにあったら、はじめましてっていうのよね。それから、わたしのことをつたえて、それから……)
少女は頭の中で何度も確認する。
するとーー
「御影圭様でしょうか?」
「ああ。配達か。ありがとな」
「仕事ですから。では、私はこれで」
(みかげ、けい……。それがわたしのあたらしいごしゅじんさま?)
少女が青年ーー圭に手渡される。
(ごしゅじんさま、どんなひとかな)
少女は圭を見ようと光の差し込んでいる方に目を近づけるが、揺れることもあり、上手く見えなかった。
✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎
(さてと……)
圭は大きな段ボールを抱え、自室に向かっていた。
中に入っているのは、昨日の夜に頼んだモノだ。
(本当は、こんなモノを使いたくはないのだが……)
だが、コレを使わなければ、やがて圭は死んでしまう。
誰だって、自分の命が天秤にかかれば、自分の命を取るものだろう。
圭はそう考えていた。
ビリビリ……と紙を破る音が部屋に響く。
(どんなモノが入っているのやら)
圭は、軽い気持ちで箱を開けた。
「! お前が……」
大きな箱には、小さな少女がすっぽり入っていた。
黒髪、黒目の小さな少女だった。
何処か儚げで、だが歳相応の幼さで溢れている。
だが残念なことに、顔はとても美しいのだが、服はボロ雑巾のように汚れていた。
少女は起き上がると、圭を見つめた。
(こんな少女を、俺は買ったのか……?)
嫌悪と気持ち悪さで吐き気がした。
今まで圭は、裏で取引している輩を好ましく思っていなかった……むしろ、軽蔑していた。
しかし、今は圭もその界隈に手を染めた一人だ。
こんな少女を、圭は自分が買っただなんて思いたくなかった。
後悔しても、もう遅い。
どのみち買うことになっていたのだろうから。
「っ……。君が吸血用人形か」