ブラッドドールとヴァンパイア
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 ブラッドドールの仕事はヴァンパイアに吸血されること。
 少女がさらに幼い頃に言われ続けてきた言葉だ。

(ごしゅじんさまはやさしいおかた)

 だが優しさには限界がある。
 自身の身を削ってでも他者のために力を尽くそうとする者はそうそういない。
 その他者がブラッドドールで、自身がヴァンパイアなら尚更だ。

(わたしのかわりなんて、たくさんいるのに)

 少女を「人」として見たのは圭が初めてだった。

(わたしのためにごしゅじんさまがくるしむことなんて、あってはならない)

 だから少女は爪で肩に傷をつけ、圭に血の匂いが伝わるよう行動した。

「やめろ……やめ……っるんだ……っ」

 圭は抵抗するも、少女の血を前には敵わない。
 ヴァンパイアの生存本能が、圭の理性と歯止めを無惨にも切り捨てる。
 少女は圭の方へと一歩、また一歩近づく。
 それに比例して匂いも強くなる。

「きゅうけつされることにはなれております」
「……っな、くる、な……っ」
「らくにしていただいてけっこうです」

 少女は圭の膝の上に乗る。
 手を後ろに回し、背を伸ばして圭の口部に傷口を近づける。

(こんなにちかくてもまだたえている……すごい)

 ものすごい精神力と集中力があってできることだ。
 少女の血を前にしても耐えられたのは圭が初めてだった。

「っ……にげ、ろ……っ」

 圭は吸血することを、それによって少女が傷つくことを嫌がっていた。
 だが少女はお構いなしに圭に体を近づける。

「や、めろ……にげっ……ろ……!」
「ごしゅじんさまのことを、こわいとおもったことはありません」
「なに、を……」
「ごしゅじんさまがきゅうけつされても、ほんのうのままにうごいても、こわいとおもうことはありません」

 それは少女の本心であり、今もこれからも変わらないことだ。

「だから……」
「!!?」

 少女は強引に圭に自身の血を口に含ませる。
 圭の口内に本能がひたすらに求めていた血が流れ込む。

「がまんせず、とくとおあじわいください」
「〜〜〜〜っ」

 その言葉と同時に、圭は吸血した。


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