もう誰にも恋なんてしないと誓った

11 君の評判にも傷が付く◆アイリス

 キャメロンから聞いたのは、シンシアと観劇に行くと言う話だ。
 紹介してあげたわたし抜きで、ふたりで出掛けると言う話だ。
 それとは別の話をオースティンお兄様は仰っているの?



「君は今日もひとりで、キャメロンに会いに来たのだろう?」

「……そうですが?」

「継母上はあいつに甘いから何も言わないが、私はもういい加減にしろと忠告した。
 特定の女性と交際だの、婚約したいだの言い出した男が、他の女性とふたりだけで会うのはおかしいとね。
 因みに父上も、私と同意見だ」



 特定の女性ってシンシアのこと?
 キャメロンが婚約したいだの言い出した?
 ふたりの間でそんなに話は進んでいたの?

 いつ?ずっとわたしが一緒に居たのに?
 聞いてない、聞いてないから!
 シンシアからも!キャメロンからも!


 わたしの家にはまだ無いけれど……
 もしかしたら、ふたりは電話で連絡を取り合っていた?



 知らない間に進んでいた話は、頭を殴られる位の衝撃だった。
 だけど、それを顔に出すわけにはいかない。



「子供の頃と同じ様に、結婚前の君がキャメロンに会う為に単身この家に出入りしているのは、君の評判にも傷が付く」

「……どうでもいい人からの評判なんて、わたしは気にしていませんわ。
 キャムとは単なる幼馴染みで、そんな関係じゃないとお兄様もご存じでしょう」

「お互いの家族がそれを承知であってもだ。
 他人からはどう見られるか、見られてはいけないか。
 君にはどうでもよくても、サザーランドにとっては大事なことだ。
 それを踏まえてキャメロンに、己の立場を自覚しろと言った」

「……」

「母親同士が親友だから、君達は幼馴染みになっただけだ。
 あいつがカーライル嬢とこのまま続けたいのなら、君との関係も変えなくてはいけない。
 ……私は君にここへ来るなとは、言っていない。
 これからはひとりでではなく、子爵夫人と訪ねて来て欲しいだけだ。
 簡単なことだろう?」


 母親同士が親友だったから?
 君達は幼馴染みになっただけ?
 ご自分は違うと仰りたいの?
 そんな言い方、酷すぎる!



「どうして……お兄様にそんな事を言われないといけないんでしょうか」


 声が震えて、わたしにはそう返事するのが精一杯だった。


< 21 / 80 >

この作品をシェア

pagetop