もう誰にも恋なんてしないと誓った
◇◇◇
あの破談から8年。
わたしは25歳になっている。
夜から朝方にかけて。
目覚めると、動いたわけでもないのに、隣で眠っている夫も目を覚ます。
それはいつものこと。
「……眠れないの?」
「なんだか寒くて、目が覚めたの。
起こしてしまってごめんなさい」
「……ん……おいで」
夫は眠そうにしながらも、寝具の中で腕を広げて、わたしを迎えてくれる。
抱き締めてくれるその暖かさに、いつしかわたしも再び眠りに落ちている。
もう誰にも恋なんてしないと、あの日誓った。
それは3年前に夫からプロポーズされて。
いつまでも待つ、と言って貰って。
半年以上かけて考えて考えて、受けた時もそうだった。
「私は貴女と、人生をかけて信頼を育てていきたい。
その信頼がいつか愛になれば、と思っています」
その言葉の通り彼は、燃えるような焦がれるような恋ではなく。
確かにそこにあると思える信頼と。
重ねた日々の中でゆっくりと増えていく愛情で、わたしを包んでくれる。
わたしのお腹に初めて宿った命は、7か月目に入った。
守るという言葉を、夫は口にはしないけれど。
彼が隣に居てくれるだけで。
わたしはもう夜に凍えることはない。
夜の沈黙に飲まれそうになって、ブランケットを被ることもない。
孤独に耐えかねて、身体が軋むこともない。
それでも、これまでのこと、これからのこと。
色々考え過ぎて、夢を見て、目が覚める夜もあって。
そんな時、彼は眠れぬわたしを抱き締めて。
そして言うのだ。
いつも、わたしを楽にしてくれる魔法の言葉を。
「シア……ゆっくり深呼吸してごらん」
おわり
あの破談から8年。
わたしは25歳になっている。
夜から朝方にかけて。
目覚めると、動いたわけでもないのに、隣で眠っている夫も目を覚ます。
それはいつものこと。
「……眠れないの?」
「なんだか寒くて、目が覚めたの。
起こしてしまってごめんなさい」
「……ん……おいで」
夫は眠そうにしながらも、寝具の中で腕を広げて、わたしを迎えてくれる。
抱き締めてくれるその暖かさに、いつしかわたしも再び眠りに落ちている。
もう誰にも恋なんてしないと、あの日誓った。
それは3年前に夫からプロポーズされて。
いつまでも待つ、と言って貰って。
半年以上かけて考えて考えて、受けた時もそうだった。
「私は貴女と、人生をかけて信頼を育てていきたい。
その信頼がいつか愛になれば、と思っています」
その言葉の通り彼は、燃えるような焦がれるような恋ではなく。
確かにそこにあると思える信頼と。
重ねた日々の中でゆっくりと増えていく愛情で、わたしを包んでくれる。
わたしのお腹に初めて宿った命は、7か月目に入った。
守るという言葉を、夫は口にはしないけれど。
彼が隣に居てくれるだけで。
わたしはもう夜に凍えることはない。
夜の沈黙に飲まれそうになって、ブランケットを被ることもない。
孤独に耐えかねて、身体が軋むこともない。
それでも、これまでのこと、これからのこと。
色々考え過ぎて、夢を見て、目が覚める夜もあって。
そんな時、彼は眠れぬわたしを抱き締めて。
そして言うのだ。
いつも、わたしを楽にしてくれる魔法の言葉を。
「シア……ゆっくり深呼吸してごらん」
おわり


